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重度の知的障害の子、太りすぎが心配。どんなことに気をつけたらよいか


Q.重度の知的障害の女の子です。最近体が大きくなってきたみたい…太りすぎも心配です。どんなことに気をつけたらいいですか。(長谷川元OTの研修会から)

〈太るのは絶対ダメ〉<129号>


A.でも仕方がないですよね。カロリー計算をしてあげましょう。一般的に、成人男性は、1 日3500〜4000歩、専業主婦で6000歩が平均歩数となります。小学生1万8000〜2万歩、ダウン症児が3000歩、どんなに多動な自閉症児でも7000歩です。

多動で困っていても、決まったパターンでしか動いていないので、効果的な運動はできていないのです。成長期で太るのは、皮下脂肪もつきますが、筋肉の繊維の間に脂肪がつきやすいことが問題です。食べすぎは良くないのです。〈身体をつかいましょう〉 

ただ歩くだけでは良い運動になりません。バンザイの姿勢、手を上にしっかり上げる運動が大切です。手をしっかり上げられないと、姿勢はよくならないし、安定してきません。手を上げている間は、お腹と背中がしっかり緊張してウエストを締めています。筋肉をしっかりしめて、しかも背骨をまっすぐ伸ばしてくれます。

 

手をしっかり上げると、骨盤が自然に前に出て腰が曲ったのが伸びます。そうすると重心が前に移り、アキレス筋がしっかり伸びます。

腕が下がっている時は、肩甲骨はまったく動きません。腕を90度以上あげると肩甲骨が上がります。上げている間は骨盤と肩甲骨の間がしっかり伸びます。自分の力で手を上げることによって、身体を引っ張る、成長しようとする姿勢になります。

ただ、「手を上に上げて」と言ってもなかなかやってくれません。たとえば、ボール遊びをする。ボールを投げる時はたいてい両手で下から上に投げる格好になります。それを頭の上から投げるように、大人が見本を見せてやってあげます。最初は下手でもだんだんできるようになるでしょう。

興味があればガラスにクリーナーを吹きかけて触らせるなど、高い所に手を伸ばす動きを日常生活に取り入れられると良いですね。

それでも手を上に上げてくれない場合は、筋肉は自分で使わないと筋力がつかないのですが、お母さんが挙げてあげても良いです。


子どもを壁に向かい合わせに立たせます。お母さんは後ろから手を上げてあげて、手の平を広げて壁に触らせます。そして手を離します。すると手は下に落ちます。 でもお母さんが手を離した間、瞬間的に筋肉が緊張します。落ちないように全身が協力するのです。これは反射的にできます。

よく、鉄棒が良いかと聞かれますが、鉄棒は引く力なので違います。手を上げる動きがどうしてもできない子は、よつばい、腹ばいでも良いです。寝返りごろごろでも良いです。ごろごろするとねじる動きが入るので、それだけでも違います。