Q.私は手押しの車いすで外出しています。遠方の病院に通うときには、介護タクシーを利用していますが、お金もかかるので、できるだけ公共交通機関を利用するようにしています。
ところが、これが結構大変です。運転手さんによって対応がまちまちで、何度も嫌な思いをしています。乗車の際に、スロープを出してもらえなかった。車椅子の固定をしなかったため、前輪が浮き後ろに倒れてしまい後ろの壁で頭を打ってしまった。呼んでも答えてくれないなどなど。皆さんはそんな経験はありませんか。<225号>
A.これは、2015年8月号のニュースの1面に載せたものです。その時の回答は以下のものです。
すでに、国は2006年に「交通バリアフリー法」を制定し、高齢者や障害者等の移動が円滑にできるよう計画を推進しているところです。こういう中で、低床バスやノンステップバスの導入が進められてきました。さらに、2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控え、さらに高いレベルのバリアフリー化を目指す方向が打ち出されています。
2016年4月からは、「障害者差別解消法」が施行されます。この法律では、障害のある人とない人の平等な機会を確保するために、障害の状態などを考慮しサービス等を提供することを「合理的配慮」といい、それをしないと「差別」をしたことになります。
障害者権利条約の批准から、障害者の権利を保障し、差別を解消する取り組みが広がっています。だからといって黙っていても、問題解決はされません。差別の実態を当事者が訴えていくことが、この法律を血の通ったものにしていくことになると思います。
この記事を書いてから、障害者差別解消法が制定されました。オリンピック・パラリンピックは来年に迫っています。
差別解消法では、各省庁ごとに、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」が出されていて、国土交通省の中には、一般乗合旅客自動車運送業関係として、乗車拒否を不当な差別と定義。合理的配慮の具体的な例として「車いす使用者の乗車ができないことがないように、スロープや車いす固定装置の整備・点検を徹底する。」が挙げられています。
残念ながら、この質問をされたMさんは、差別解消法ができたにもかかわらず、市バス内で不適切な対応がされたためけがをされました。
彼女は、障害のある人や高齢者が、これから増える中で、公共交通機関がもっと優しいものになってほしいと、川崎市を相手に裁判を起こしました。10月30日、運転手の注意義務違反による損害賠償という判決が出されました。
◆市バス裁判(紀さんの福祉情報)