Q.医療的ケアが必要なため、養護学校を卒業してからは、在宅生活をしています。母親が介護の中心でほとんど24時間一緒にいるような生活です。
役所にいったり病院にいったりと用があるのですが、医療的なケアがあるために、訪問看護さんにしかお願いできません。
でも訪問時間が限られているため外出まではできません。週3回来てもらっているヘルパーさんに医療的ケアをお願いすることはできますか。<168号>
A.2012年度から、「介護福祉士・社会福祉士法」が変わり、ヘルパーなど介護職も、一定の研修を受けることで、痰の吸引や経管による栄養注入ができるようになりました。
ヘルパーができるケアは、鼻と口からの痰の吸引と気管切開部のカニューレ内吸引および経鼻経管栄養と胃ろう・腸ろうからの栄養注入です。看護師さんのケアとは違って、それぞれに制約があります。
▮吸引と胃ろうからの注入をお願いしたいのですが、誰にお願いすればいいですか。
・まず主治医の先生に、必要とされるケアをヘルパーに頼んでよいかどうか、相談してください。了解が得られたら、ヘルパー事業所への指示書をもらうことができます。
・ヘルパー事業所に、かく痰吸引等のできるヘルパー(認定特定行為業務従事者)がいるか、事業所として認定を受けているかきいてください。
・訪問看護ステーションに、ヘルパーへの実施指導をしてもらえる指導看護師がいるか確認してください。
▮いろいろあるのですね。これを家族が、全部やるのですか。
・家族が訪問看護とヘルパー事業所の調整をするのは大変ですね。高齢者の場合は、ケアマネさんの仕事になります、障害者の場合は、今後「相談支援専門員」がその役割を担うことになると思います。
かくたん吸引や栄養注入は、ご本人の生活を支える上で、とても重要なことですから、相談支援専門員さんにケア会議を開いてもらい、本人・家族・訪問看護師とヘルパー事業所が参加した中で、それぞれの役割を確認してもらうといいと思います。
いくつかの相談支援センターでは相談員さんによるコーディネートが、始まっています。かくたん吸引や栄養注入がサービスの中に入ると、ヘルパーの派遣時間が代わる場合があります。サービス利用計画の変更なども含めて検討してもらえます。
▮家に来られるヘルパーさんが、研修を受けていない場合は、どうなりますか。
・ヘルパー派遣の事業所が、認定特定行為業務事業所として神奈川県の指定を受け、資格をもったヘルパーさんがいれば、その方にお願いできると思います。資格がなければ、研修を受けてもらうことになります。
・このかくたん吸引等の行為の研修は大きくわけて2種類あります。不特定の方を対象にした研修は50時間の基本研修だけですみます。研修の後、試験に合格すれば、指導看護師の下で実地研修を受けてもらい認められれば、実施が可能です。
基本研修は神奈川県内では年2回ほど開かれます。
ヘルパー派遣事業所が、認定特定事業所でない場合や、この制度をご存じない場合は、制度を理解してもらうことからはじめる必要もあります。
別紙のような「喀痰吸引等制度説明会」が開かれます。参加をお願いしてはどうですか。
法制化の前は、ヘルパーが一定の研修を受けていれば、ヘルパーと家族との同意だけで可能でした。
実施研修も、主治医の下でも可能で、入院している間に、家族と一緒に研修を受け、退院した後ケアすることもできました。今回の法制化では、実地研修は指導看護師に限定され、また、実施に至るまでに、ヘルパー事業所は、準備する書類がたくさん必要になりました。ケアがはじまったら、訪問看護師とヘルパーの持続的な連携も必要です。
一番知らなくてはならないご本人やご家族への説明が一番遅れているように思います。そのためにも「かく痰吸引等制度」が支援者の中で、広がることに期待したいです。