Q.東日本大震災から2年が経ちました。被災地の報道を見るたびに。生活の再建が進んでいないことに胸が痛みます。障害のある人たちの災害対策はどうだったのでしょうか。<157号>
A.大槌・釜石相談支援事業所・ トークの藤原さんに当時のことや現在の災害対策について伺いました。
●大槌・釜石での震災時の障害のある人の避難状況はどうだったのですか。
釜石で被災し犠牲になった障がい者は、健常者のおおよそ2倍(比率)であり、大槌町に至ってはそれ以上の被害を及ぼす結果となっています。
震災後の避難に関しては個別性があり下記の通りまとめてみます。
1.時間帯的に支援学校や通所事業所に居る時間帯であったため、被災を免れた方も多い。
2.自主避難を必要とする在宅の方は、主に家族が避難誘導することが多く、また、地域の方から支援して頂いた方は、予め地域で状況を把握されていたケースが多い。
3.逆に家族が避難誘導を目的に自宅に戻るなどして犠牲となる方も見られる。
4.大槌町全体や釜石市の一部の地域(被害の大きい地域)では、一般の避難者数も想定を超えていたことは明確で、避難所自体の運営(建物、避難所運営に携わる人など)が厳しい。
5.一時避難所に避難した障がい者の多くは、上記事柄も絡み、本人または家族の障がいの状況により、早い段階で避難所を出て親戚や知人宅等に世話になるケースが多かった。障害の重い方がより顕著に避難所から移っていく人が多かったようです。
●障害のある人たちへの独自の防災対策やマニュアルはあったのでしょうか?
障がい独自の防災マニュアルなどは整備されていなかったようです。ただし、地域によっては民生委員や町内会の人たちなどが把握しており、避難の支援にあたっていたように伺っておりますが、あくまでそのような意識のある方の地域のみで市や町で統一した動きになっていないようです。
また、下記に付随しますが、現在、岩手県が県社協に委託し防災対応マニュアルを作っている様子ではありますが、正直にお話ししますとあまり期待できるものは作られていないように情報が入っております。
●震災後、障害のある人への防災対策で、新たに作られたものはありますか。
《行政側の動きとして》
・釜石市、大槌町共に現在、防災対策を新たに策定中との話で、釜石市において障がい者にも対応できる福祉避難所の整備は進んでいるようですが、正直、市直営の「釜石市身体障がい者センター」と言う場所で、入浴設備や自家発電などの設備が無く、支援者も一都市の職員ということで専門職ではないこと。業務的には平日の日中のリハビリの場所ということもあり。私から見ての課題点。
●地域の中で、新たな取り組みをされていますか。自立支援協議会の動きなどをお知らせください。
◎自立支援協議会内には、5部会+事務局(会議)があり、趣旨などは以下の通りです。
・事務局会議(毎月)~各行政担当者や相談支援専門員、各部会長で構成し各部会での取り組み内容の報告や地域課題等に関してどの部会で話し合うかなどを検討。
事務局長は釜石市と大槌町の担当者が輪番で運営の中核を担う(ただし、輪番の欠点として毎年、担当者が代わるため動き出しの難しさやノウハウが蓄積しないなど課題がある)
・事務所部会(毎月)~釜石・大槌地域の障がい福祉系の事業所《担当者は主にサビ管》で構成。事業所運営や職員のスキルアップを目的にし、必要に応じて新たな事業展開なども模索。
・こども支援部会(毎月)~支援学校や各教育委員会、行政担当、療育教室などを主に子供に関わる機関で構成し、主に子供の年代層をターゲットにした課題の抽出や研修の企画、対応策などを検討。
・生活支援部会(毎月)~精神科病院(ケースワーカー)や相談支援専門員、支援学校高等部進路担当行政担当者で構成。主に地域生活をしている障がい者への支援を検討する場で、地域移行や計画相談などの支援の課題を話し合うと共に、地域への障がい理解や啓発活動などを目的にしている。
・就労支援部会(毎月)~中ポツセンターや職安、就労系の事業所などを中心に、一般就労や受注作業等の開拓を検討。
・サービス構築部会(半年1回)~地域の施設長クラスと行政担当や事務局構成員などで構成。事業所部会はあるものの実際に地域で求められる資源創出となると、サービス管理責任者では決定権が無く。実際に決定権のある施設長クラスに地域課題や求められる資源などを提案し事業展開などの解決策を検討する場。
《今年度の協議会の活動》
1.事業所部会~
事務所の防災マニュアルの見直しを圏域で行い、それぞれの事務所のマニュアルを参考に必要な対応策を盛り込む。
・歯科医師会や薬剤師会と連携し研修を企画。特に薬剤師会からはお薬手帳の複数(複写)持つことを勧められ、利用者の服薬内容を事業所も管理し始める。
・事業所間の連絡網を作成、拠点としては、24時間365日稼働する入所施設を釜石・大槌共に位置づけるが、連絡網に関しては手段(電話やメール、フェイスブックなど)、実際の災害時を想定して未だ検討中。
2.生活支援部会~
・支援学校の卒業生など地域で生活している当事者と、被災にあって仮説に住んでいる方たちとの交流。目的としては従来、支援を受ける側だった当事者が仮設団地や仮設団地にある高齢者等の支援施設にて、環境美化のお手伝いをし支援を受ける側から支援する側に立ち、障がいの理解を図る。
3.その他~
他にも各部会で取り組んだことはありますが、主に震災に関連したものは上記の通りです。
・最後に今後の予定になりますが、震災を受けて障がい者支援にあたった団体やこれから支援を検討する団体等が5団体ほど有り、事務局構成員とそれら新規事業立ち上げを検討する団体が、情報交換を主な目的にプレゼン大会めいたものを企画しています。目的としては、それぞれの新規事業展開を検討中の団体がバラバラに動いており、各々の存在を知らないまま利用者の取り合いを避けることや、実際に事業展開したが途中で運営が難しくなり辞めてしまうなど事業者側や当事者に不利益にならないことを避けるため、地域のニーズを知って貰うことなどを目的にしています。
※上記に関して、良いところだけ記載しましたが、課題も多くあります。ただし、震災前の協議会よりは各部会、各担当者が具体的一歩ないし半歩を積み重ね始めているような実感があります。
〇震災後の障害のある人の生活は、再建されていますか。ご家族を亡くされた方や住居を無くされた方たちは、どうされていますか?
質問の回答は正直、難しいところもありますが、総体を客観的に見た私見としては、「再建」とイコールではないかもしれませんが、ひとつ「お金」に関しては、被災している場合は義援金や支援金などで当面の生活に困らない程度のお金を受け取ることが出来ています。その為、家族構成や本人の能力など必要に応じて相談支援専門員として収支の確認や支出先の整理(携帯電話代など)のお手伝いをさせて貰っています。
また、事業所に関しては、震災後、比較的早い段階(平成23年4~5月頃)から再開している事業所が多く、生活リズムの変化も早い段階で戻っている人たちが多くあります。就労に関しても平成23年度が17名一般雇用され、今年度は12月時点で29名雇用されるなど少しずつ良くなっているようにも感じられます。
しかし、個別的に見ると仮設住宅が狭く音漏れの心配などはつきまとっており、家族を無くされた方などを受け入れるグループホームは地域の地価の高騰や建てる場所がないなどの課題があり、震災前から資源の少ない地域でしたが、創出することの難しさがより顕著になっています。対象者によっては数名ですが、成年後見制度の利用も検討する対象者がおり、相談支援も大忙しです。
〇災害のような緊急時に、相談支援センター等はどういった役割を果たしてこられましたか。今後どういう役割があると思われますか。
今回の震災はよく言われますが想定外の被害状況で、まず市町村行政機能が麻痺したところも多く、地域の障がい者支援としては、安否確認などの活動をしておりました。
今後の課題としては行政機能が麻痺した際の補完を相談支援が担うべきと思っており、センター機能として「相談支援センター(基幹型相談支援)」は必要と感じております。しかし、基幹型を含めてまだ当地域で行政を含めて必要性は共有してもらえているのですが。委託費などお金の問題もあり具体化できておりません。
また、市町の防災対策に関してもはっきりとした位置づけはないままですが、そのような中で、相談支援側からお願いしたいこととして、市町との相談支援の委託業務の中にこれまで無かった「災害時の障がい者支援援護授業及び情報の共有」を加えてもらいました。これでいくらか必要な個人情報等の入手に関する根拠を作れたらと思います。