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報道等で「優生保護法」が取り上げられているが、どのようなものだったのか?


Q.最近、報道等で「優生保護法」が取り上げられているのを見聞きします。障害者に対して不当な手術をした。ということは分かりますが、詳しい内容や背景までは分かりません。一体どのようなものだったのでしょうか?

怖い気もしますが、知らなければいけないことかと思い、聞いてみました。<268号>


A.そうですね。最近、報道等でよく取り上げられている「優生保護法」ですが、そもそもなぜこのような法律が存在していたのでしょうか。「優生保護法」とは何だったのか。私情をいれずに書くことが難しいので、違うところもあるかと思いますが、ご容赦ください。

 戦後1948年に制定され、1996年まで存在していました。この法の名の下に精神障害・知的障害・神経障害・身体障害を有する人及びハンセン病患者の人に、同意のない強制的な不妊術が行われました。

 この優生保護法とはいわゆる優生学・優生思想の考え方に基づいています。第二次世界大戦前、ナチスの台頭で1933年にドイツで「遺伝病子孫予防法」(いわゆるナチス断種法)が制定され、優生思想という考え方が台頭していきます。(古くはヨーロッパ列強時代の植民地支配、その後のアメリカ白人至上主義に通じます。)

 このような思想が基となり、優生保護法というものが成立し、なんの疑問もなく強制手術が行われていたのだと思います。

実際に優生保護法の名の下に、強制的に手術を強いられた方たちが、各地で訴訟をおこしていました。各地で訴訟をおこしていた事が影響し、報道等で頻繁に取り上げられていたのだと思います。そんな中、2024年7月3日に最高裁にて、旧優生保護法は憲法違反だとする初めての判断を示しました。

 そのうえで「国は長期間にわたり障害がある人などを差別し、重大な犠牲を求める施策を実施してきた。責任は極めて重大だ」と指摘し、国に賠償を命じる判決が確定しました。その後政府は原告の方のみでなく、強制手術を行われた方全員を補償対象となりました。

 このことは、評価に値するのでしょうが、最高裁判決に至るまで、国は不法行為から20年が過ぎると賠償を求める権利がなくなるという「除斥期間」を一つの理由として訴えを認めてきませんでした。こういう人権意識がいまだに社会に残っているではないでしょうか。

 1996年というごく近年まで、この法律が存在していたということが、やまゆり園事件にも通じているのだと思います。障害者差別解消法という法律も出来ましたが、理解されているとは到底思えません。やまゆり園の報道もめっきり少なくなったと感じますし、逆にこのような判決が出ると、「障害者への補償など不要」だとか「優生思想は正しい」だとかという言うことが台頭してきたりします。

 優生保護法という法律が存在していたこと、やまゆり園事件というものが、なぜおきてしまったのか、根は一緒だと思います。この根を断ち切ることはおそらく無理だと思います。が、こういう根を限りなく少なくしていくことは可能だと思います。そういう社会になってくれるようまずは自分が無意識の差別をしないようにしていきたいです。(佐藤)