Q. 「あんしんノート」とか「親なき後ノート」、学校の「サポートノート」など、親のもしもに備えたノートって色々ありますよね。
小さい時から療育センターに通っていて相談支援も受けているのだから、いざというときには問い合わせれば、生育歴や支援の記録など分かるのではないでしょうか?病院にはカルテがあるから、聞いてもらえばいいのではないですか?<243号>
A.三人会「あんしんノート」を作成し、支援者のネットワーク作りを目指している岡本さんに聞いてみました。
(岡本)うーん。それは甘いですね。療育センターや病院には、カルテや資料はありますが、それぞれの機関の中に情報はあっても、誰かがその情報を取り出してまとめてくれることはありません。
「あんしんノート」を作ろうと考えたのは、病院に行っても施設に行っても、何度も同じように成育歴や病歴を聞かれるので、それぞれの支援者が欲しいと思われる情報をトータルにまとめておこうと思ったからです。自分もだんだんに忘れたり混乱したりしないように、できるうちに書いておこうと思いました。障害年金申請の時にも役に立ちますよ。
それぞれの施設の登録用紙などはバラバラですね。書式を統一してほしいと行政に要望したこともありましたが、実現しません。今は、新たに書いてくれと言われたときには、あんしんノートを見せて「これじゃあいけませんか」と出しています。
「あんしんノート」の書き方はいろいろで、お母さんの中にはその人の育ちの中での思いや好きなものなど、写真を入れる方もいらっしゃる。それも大事なことだけど、初めて接する支援者にもわかるように、必要とするシンプルな情報だけを記述するのもいいと思います。
参考:「親心の記録」~支援者の方々へ~などはわかりやすいです。
「あんしんノート」は書いておしまいではなく、支援者に伝えていくためのものなので巻き込んでいかなければ意味がないです。書き込むときにも、支援者と一緒にできるといいですね。一人で書いていると、極端になってしまうから。うちの場合は1年前に重篤な病気で入院し、退院の時に計画相談に入ってもらいました。
その時、病院のソーシャルワーカーさんと地区のワーカーさんにも入ってもらい、「あんしんノート」をもとに、今後の対応を考えてもらいました。病歴や今までの生活歴などを共有し、新たに訪問看護さんが入りました。ノートを見てもらえば、必要なことを確実に伝えることができます。
ふだんのデータの共有は、今はメーリングリストを活用しています。後見人さんや計画相談や支援者に、例えば通院したらその報告をメールで送ることで共有。それは家族でなく支援者でやってもらっています。(聞き手 谷)
通院が多い人は医療情報は一冊に
耳鼻科や眼科も含め、たくさんの診療科にかかっているので、医療情報は一冊にまとめ、科ごとに分かれたファイルをつくり記録しています。
そこまでしなくても、袋に分けて入れたり引き出しに入れておくだけでもいいからやっておいた方がいいです。本人と家族を分けて、保険証やお薬手帳、受診カードをわかるようにしておくと、いざというとき役に立ちます。
相談は誰に
娘が小さい頃、制度がない時から、多くの支援者に助けてもらってきました。その時々で、動いてくれる人がいました。今でも制度の隙間を埋めなくてはならないことがたくさんあります。だからキーパーソンは計画相談の人と決めず、その時の状況で誰になってもらってもいいと思っています。
相談員から
若い利用者さんのご両親がなくなられました。病院の診察券と療育手帳以外は、母子手帳もサポートノートも残されませんでした。
未成年なので、療育センターには資料が残っているだろうと問合せましたが、公立から民間へ変わっていて、資料は本庁にあるということでした。その本庁では、保存期間は10年で廃棄されていました。
児童相談所に療育手帳取得時の相談記録などないか聞いてみました。後見人さんの請求があれば、開示はできますが、判定結果しかできないそうです。医療機関も、現在通院中のところでは、処方箋の情報をいただけましたが、それ以前の医療機関の情報はわかりませんでした。ほとんどが個人情報ということで、家族以外には開示がされません。
以前、お母さんに「あんしんノート」をお勧めしたことがありますが、療養中のお母さんには体力も気力もなかったと思われます。相談員として、聞き取りしてでも書いておけばよかったと悔やまれます。
サービス利用計画を作成する際、基本情報として成育歴や病歴を記録しますが、その時の時点で伺えたことしか記入ができません。相談員が交代した時も、最後の計画書の引継ぎがあるだけです。
相談員としても、支援を組み立てる基本になる「あんしんノート」の活用が必要だと痛感しています。
「親心の記録~支援者の方々へ」HPからダウンロードすることも送付してもらうこともできます。
ノートを書いておくことで親自身の安心感につながり、子どものために何をしてあげようかとさらに前向きなことも考えられるようになると思います。
障害のある子が「親なき後」も周囲の温かいサポートを受けながらその子らしく生きていけるように、「未来への道標として」この「親心の記録Ⓡ」をご活用ください。
◆「親心の記録」は、一般社団法人 日本相続知財センターから発行されています。
※以下のホームページから無料でダウンロードできます。
https://oyagokoronokiroku.jp/contact/
団体には無料発送されるのでロンドでも10部取り寄せました。事務所に取りに来られる方には差し上げます。必要な方は谷tani@rond.jpまでご連絡をお願いします。
※大変シンプルなものです。それぞれの障害の特性に合わせて、必要事項を書き足す必要があると思います。書き加えできるようデータ化されるといいなと思いました。