Q.放課後等デイサービス事業等の施策整備により、学齢期のこどもたちは、平日18時ころまで、重い障害のある子どもたちも、家庭以外で安心して過ごせる場が増えてきています。
ところが、高等部を卒業すると、15時30分には通所から帰宅してくるような状況で困られています。
◆地域活動ホームなどの多機能型の支援をされている、社会福祉法人横浜共生会の小沢さん〔障碍施設担当〕にお聞きしました。<182号>
A.◆横浜では、成人の夕方支援の問題はおこっていませんか。
小沢:残念ながら、当法人内の法人型地域活動ホームでは親御さんや家族の就労保障の面からの利用はできないことになっています。
◆川崎同様の課題が派生していると思われます。
小沢:もともと、横浜独自の地域活動ホームは就労保障の観点はなく、当法人の経営する地域活動ホームも通所後に生活支援事業として一時ケア<ご家族の都合等で時間単位でのケア・サポートする事業>がありますが、決まった曜日や時間での利用は出来ない現状があります。
又、ご家族によっては通所後の移動支援や居宅介護等のサービスを組み合わせて対処されている様です。
◆共生会では、どのような対応をされていますか。
小沢:前述のように課題としての認識はありつつも、ほとんど対応できていません。当法人の意識の甘さや声なき声に対するアンテナが張れていない結果であると思います。
法人内における「地域生活支援センター海」は制度の狭間に対するサービス提供を創出する目的で解説し、居宅介護事業を実施していますが、登録ヘルパーの担い手が少なく、上記の通所後の支援等に結び付かず苦慮している現状です。
介護職員初任者研修も実施しておりますが、同修了者を当法人ヘルパーに採用するのは稀です。言ってみれば地域福祉の人材育成を目的としているので…。
地域内にある潜在的な「働き手」の掘り起こしを図りつつ、登録ヘルパーを増員し、且つ、生かしていくことが今後も肝要と思われます。
従って、登録ヘルパーさんの労働条件や登録後の養成・スキルアップも重要な鍵となります。
◆地域活動ホームの事業に対して、横浜市独自の助成金等はあるのでしょうか。
小沢:横浜市の法人型地活ホームの市単補助は次の通りです。ざっくりですが…今年度予算からは以下の通りです。
①地活の基本運営費として約2,970万円。
②生活支援事業費(ショートステイ・一時ケア・余暇支援・おもちゃ文庫*実績払い含む)として約3,740万円
③上記の計6,710万円の市単補助が計上されています。
④この他に受託事業(相談支援・自立生活アシスタント・後見的支援事業等)として約5400万円を計上しています。以下は平成27年度の当法人地活ホームの1事例です。
この様に市の予算を付けて頂き大変感謝をしております、しかし、ここまで来るには障がい当事者×家族会(親の会等)×福祉関係者等×行政や市民の方々などの多大な努力の賜物です。
ご承知の通り、市に在っては(財)横浜市在宅障害者援護協会(現・市障害者支援センター)が1973年に親たちによって設立され現在に至っております。
同会はその後の市の障がい福祉に多大な影響を与えたことはよく知られています。この様に一人ひとりの声を集め、個のツナガリに変えていく!真に必要なものは声を集めて市民共同の財産として市民協働の基に創りだしていくことが今、時代に求められていると思います。
◆今後の障害のある方の支援について、ご意見をお聞かせください。
小沢:昨今のマスメディアによる発信では社会福祉法人の譲渡に関わる金銭の話や障がい系施設での虐待事件等々、社会福祉法人の在り方が問われています。本来、社会福祉法人は障がいの有無によらず人々の暮らしをサポートし、安全で安心な社会のあり様を、実践を通じて問い続け、具現化する役割があるのではないでしょうか。
いま、福祉制度は支援費制度以降の措置から契約制度に、この十数年制度変更の波に晒されています。制度は所詮人間の創ったもの、どこかに不備や不十分さが残ります。しかし、「契約」行為そのものは個人人権や生き方を尊重し支持していくと思います。
言い尽くされているかもしれませんが、日々生きる当事者個々人の生き方を大切にし、その人らしく生きられる地域・社会にならないと、生きていて(きて)良かった感は持ちえないかもしれません。
また、当法人では障がい者支援施設を開設しています。市単の補助もあり国基準の人員配置を上回る職員を配置しており、市外施設からみれば羨ましいと言われますが、入居者個々人への支援の状況からは、とても「その人らしく生きている」とは言えない状況です。
入所施設の限界つまり、横浜を含めて今以上の予算措置を講じる必要があります。その為には国民的な支持がないと難しいと思います。
〇〇省では財源の絡みで介護保険との統合を捨てた訳では無いようですが、予算の裏付けがあれば継続且つ国民的合意が得られるのか…。生きる上で障がいを持つということは等しく全ての人たちに与えられた条件ですし、障がい当事者や暮らしに困難さを抱える人たちがこの社会の構成員として認められた社会が必要でしょう。
急がば回れ、適うなら特別な入所施設ではなく、障がいの状態に関わらず、地域の中で生きて暮らす場を創ること。具体的には、地域の中で暮らしの拠点を整備して小さな事業所を地域の中に点在させ、点と点の支援を面の支援に変えていくこと。
地域の中での出会いが、人と人とのツナガリの新たな関係性を創り上げ、障がい当事者だけでなく多くの人たちの無限の可能性・生きる力を育み広げていくような気がします。