Q.来年の4月から、障害者差別解消法が施行されるそうですが、どんな法律なのでしょう。…障害当事者がお答えします。<180号>
A.▮どうしてできたのですか
この法律は、障害者権利条約を批准するために必要な国内法整備の一環として規制されました。どういうことかというと、障害者権利条約を批准するには、日本の福祉制度では水準が低すぎるため、当事者団体から批准を急がないよう要望が出ていました。
そのため国は、障害者制度改革を行い、障害者虐待防止法の施行や、この障害者差別解消法の整備を行うことにより、やっと障害者権利条約も批准することができたのです。とはいえ障害者差別解消法が成立したことは、障害者やその家族及び関係者にとって悲願であったと言ってよいと思います。
ただ、法律ができたことで直ちに障害者差別が解消されるわけではありません。私たちが、この法律を活用し、これは差別だと今まで我慢し続けていた日常の苦労や不満を発信していかなければ、この法律の意味はなしません。
そこで、この法律の要点を抜粋し簡単に記してみますので、ご参考にしていただければと思います。
▮どんな法律ですか
1 法律の基本的位置づけと目的
なにが差別かを具体化するということ。
2 基本方針の策定
行政機関及び事業者が行わなければならないことに関する基本方針を策定します。
この時、あらかじめ障害者その他の関係者の意見を反映させなければいけないとされています。
3 差別解消のための措置
・合理的配慮不提供の禁止
障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合、必要かつ合理的な配慮をしなければならないものとされています。
・具体的な対応
ア ガイドライン(対応要領・対応指針)の策定
(ア)行政機関等の職員のための対応要領の策定
行政機関の長、地方公共団体の機関等は、基本方針に即して、行政機関等の職員が適切に対応するために必要な要領(対応要領)を定めることとされています。(事業者も同様)この時、あらかじめ障害者その他の関係者の意見を反映させなければいけないとされています。
・実効性の確保
対応指針に定める事項に従わなかったときは、過料が課されます。
4 差別解消のための支援措置
(1)相談及び紛争の防止・解決のための体制の整備
(2)啓発活動
(3)情報の収集、整理及び提供
(4)障害者差別解消支援地域協議会の設置
国及び地方公共団体は、関係機関等により構成される「障害者差別解消支援地域協議会」を組織することができ、障害を理由とする差別に関する情報の交換、障害者からの相談及び事例を踏まえた協議並びに差別解消のための取り組みを行うとともに、同地域協議会を構成する機関等に対し、事案に関する情報の提供及び意見の表明その他の必要な協力を求めることができます(すでに他地域では設置されています)。
5 施行
この法律は2016(平成28)年4月1日から施行されます。
と抜粋するとこのようになりますが。重要なのは法律の目的にある通り、何が差別かをこれから決めるということです。そのために今、私たちが声を出さないとガイドラインと称するものが出来上がってしまいます(3年後に見直すとありますが)。
▮当事者や家族は、どうすればいいのですか
川崎市は当事者及びその家族・関係者に対し、上記のガイドライン策定や相談体制の整備、普及啓発活動を行っているのかよく分かりません。(調べた限りでは見当たりません)。
しかし、傍観しているわけにはいきません。今のところ、ここだという窓口がありませんので、障害者差別解消法が成立したという事実をもとに、区役所や基幹型及び地域型の相談支援センター等に、差別だと思っていることや、これは差別なのか等々疑問に感じることを、行政機関に聞いてみるという行為を行っていきましょう。
なお、冒頭でも触れていますが、この障害者差別解消法は法律であり、障害者権利条約の方が法律よりも上位にあります。条約の考え方が優先され条約に沿って、法律改正を要求できるということです。
地域活動支援センターGDPかわさきセンター長
佐藤紀喜