Q.車いすを使っている娘がいます。外出をさせたいのですが、トイレの時にヘルパーさん一人だと難しいと思ったので、保健福祉センターで、二人介護をお願いしたところ、体重が40キロ以上じゃないと、と言われました。
娘の体重は40キロはありませんが、いつも家族で外出するときには、父親と私の二人がかりでトイレ介助をしています。そもそも30キロ以上ある人間を、女性のヘルパーさんが一人で持ち上げられるものなのでしょうか?<162号>
A.今年の6月に厚生労働省から19年ぶりに「職場における腰痛予防の指針」の改訂版が出ました。この中で、福祉・医療分野等における介護・看護作業について章が設けられていて、福祉用具を導入するなど省力化につとめ、労働者の腰部への負担を軽減するよう求められています。
腰痛は労災の中で6割を占める疾病で、その中でも介護や看護を含む保健衛生業の占める割合は約3割で、他の業種と比べてその増加率は年々大きくなっています。せっかく医療・福祉の業界で働こうとしている人、働いていた人が腰痛で仕事を断念し、人材不足に拍車をかける状況になっているのです。
この指針では、人力での抱え上げは原則として行わない。対象者の状態に即して、スライディングボードやスタンディングマシーン、リフターなどを適宜利用する。このような福祉用具が使えない場合は、対象者の状態及び体重等を考慮し2名以上で作業することが明記されています。
ちなみに、女性労働基準規則では、満18才以上の女性で、断続作業30㎏、継続作業20㎏以上の重量物を取り扱うことが禁止されています。一般的に女性の持ち上げ能力は男性の60%位で、体重60㎏の男性が持ち上げられる重量が体重の40%の24㎏までなら、女性はその6割で18.8㎏までとなるのです。
そもそも日本の福祉業界では、まだまだ人力で抱え上げる作業が主流で、そのため多くの人が腰痛を抱えたままで仕事をしている状況が続いています。これは、労働者本人だけでなく、利用者やその家族にとっても、いつ事故が起こるか、また担当者が(腰痛で)いなくなるかわからないという不安定な状況が続いているということです。
川崎市にも、体重で支給要件をしぼるのなら、新しい厚生労働省からの指針を基にしてほしいという申し入れをしています。施設と違い、利用者の居宅や外出での介護は設備を整えるのが難しいですが、ヘルパーの健康を守るためにも、ご本人やご家族の方と相談しながら、よい方法を見つけていきたいと思います。
このヘルパー派遣の体重制限は、18歳までの児童にも適用されます。身体介護が認められるのは、「当がい児の体重が60kg以上で、保護者だけでの介護が困難な場合で
*座位保持・立位保持ができない場合は、40kg以上・・入浴の場合に限っては、20kg以上」とあり、付記として、通常の子育てでも生じる困難さを補完するものではない、とされています。
通常の子育てでは、3歳児(平均体重14.5kg)以上の年齢の子どもを常に抱き上げることはないと思われます。ここも見直しが必要ではないでしょうか。