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吸引を今まで通りヘルパーにやってもらえるのか心配


Q.在宅で生活している重度の障害のある息子がいます。数年前から厚生労働省の通知で、ヘルパーさんにもたんの吸引が認められたということで、研修を受けたヘルパーさんと同意書を交わして、吸引をお願いしてきました。

今後、医療的ケアが法律で認められると聞いたのですが、そのための研修制度も変わるということで、今まで通りやってもらえるのかどうか、少し心配になってきました。<144号>


A.痰の吸引などの医療的ケアのある人も、在宅で生活することが当たり前になって、もう20年くらいになります。

電動吸引器でのたんの吸引、経鼻経管栄養・胃ろうによる経管栄養、中には人工呼吸器をつけて在宅生活を送る赤ちゃんも増えてきています。

長い間、医療的ケアは、医療行為とみなされ、医療者または、家族しか認められない行為とされてきました。でも、施設や病院と違い、在宅生活では、医療者がいつも近くにいてくれるわけではありませんね。訪問看護師さんの訪問も1回につき1時間半程度でしかなく、回数にも限度があります。

そんな中、ALSの患者会の要望を皮切りに、2008年に、厚生労働省が「当面のやむを得ない措置」として、「家族以外の者のたんの吸引」を認め、一定の研修と家族との同意書をかわすことで、たんの吸引がヘルパーにも認められるようになりました。しかし、これは、法律そのものを変えるものではなく、「違法性の阻却」(法律解釈としては違法であるが、やむをえない行為として違法性を問わない)として認められるというもので、痰の吸引のみという限界もありました。

 

2010年厚生労働省は、医療的ケアに関する法改正の検討を行い、2011年7月に、「社会福祉士法及び介護福祉士法の改正」により、介護福祉士に医療的ケアを認めるとし、研修制度も法制化されました。

こういった動きを見る中で、法律で規定されることにより、医療的ケアの実施者のハードルが高くなることも、懸念されました。厚労省の提案する研修は、介護施設等で、不特定の人たちを対象の医療的ケアを想定した研修制度だったからです。

その後、ALS患者会や関係者による要望が実り、不特定多数を想定した研修とは別に、今まで通り、特定で個別のケアを行う場合の研修制度もつくられることになりました。

 

ご質問の方の場合のように、今まで、ヘルパーさんがたんの吸引を行っていた場合は、「施行の際に、すでに研修を修了したものと同等以上の知識および技能を有する」ものとして、みなし認定が可能となっています。

 

2012年度から、他のヘルパーさんにも、吸引等の行為を行ってもらう場合には、そのヘルパーさんに9時間程度の研修と演習や実地研修を受けてもらうことが必要になります。