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「障害者の権利条約」って何ですか?


Q.「障害者の権利条約」って、何ですか。そもそも、わたしたちの生活に関係があるんですか。


A. 「障害者の権利条約」は、21世紀初の、国際的な人権条約です。2006年12月13日、国連の総会で採択されました。文面の作成には、政府機関のみならず、多くの障害当事者の非政府機関(NGO)が参加し、5年以上かけて作られてきました。

 

ポイントは、障害当事者の立場から、障害者の基本的な「人権」を、明確に書き込んだことにあります。多くの障害者に関する法律は、医療や福祉の視点から作成され、当事者の人権を十分に考慮したものとはいえません。

特に日本では、財源や政策状況次第で「ないがしろにされても仕方ないもの、我慢するしかないもの」と思われがちです。当事者や家族ですら、そう思い込んで=思わされている。しかし、人権とは本来、財政や政治がどう変わろうとも、その人がどんな人であろうとも、「最低限守られるべき」基本的な権利を指します。

 

日本政府は、2007年9月28日に「署名」はしましたが、「批准」はしていません。署名とは、将来条約を批准する意志がある、と表明すること。批准とは、条約を正式に受け入れることです。批准した場合、その国は、具体的に国内法の整備を行なうことになります。


その場合、現在の日本の国内法と抵触する部分が、かなりあると思われます。たとえば通園や通学に親の付き添いを強制する、障害のために病院から治療や入院を拒否される、バスや電車のアクセスに不便がある、などは、人権上あってはならないことです。しかし、それが暗黙の前提(仕方ないこと)とされていませんか。

 

また障害者の権利条約は、障害を「医学モデル」ではなく「社会モデル」で考えます。本人の機能の治療・リハビリを過度に絶対化せず、障害を本人と社会環境の関係から作られるものと考えた上で、社会環境の整備を重視するモデルです。

条約はさらに、抽象的な「平等」のお題目で済ませず、社会の側の個々の障害者への「合理的な配慮」のもとに、障害者が実質的な平等を与えられることを求めます。障害者を特別扱いしなさい、ではなく、障害ゆえに本人や家族が不平等な生活を強いられること、合理的配慮がなされないことを、「差別」と考えるのです。

 

はっきりいって、私たちの多くは「人権」という言葉を信用していません。しかしそれは、歴史の中でこつこつと、地道に蓄積されてきたものです。基本に立ち戻って、考えてみてもよいのではないでしょうか。

 


以上、東俊裕監修/DPI日本会議編集『障害者の権利条約でこう変わる』(解放出版社、2007年12月)を参照しました。

 

なお、「豊かな地域療育を考える会」が2008年3月20日に開催するシンポジウムでは、監修者の東俊裕さん(弁護士。熊本学園大学社会福祉学部教授。国連・障害のある人の権利条約アドホック委員会(第2-8回)日本政府代表団顧問)を講師にお呼びし、じっくりお話を聞くことになりました。シンポジウムについて、詳細は★までお尋ね下さい。