Q.家族にALSの者がいます。頻繁なたんの吸引、細かい体位交換、人工呼吸器の安全確認など、24時間介助がどうしても必要です。
毎夜の寝ずのケアをふくめ、家族を中心に介助を続けて来ましたが、体力面できびしく、ヘルパーさんの力をお借りできればと思います。訪問看護師さんも使える時間が限られています。
ヘルパーさんに入って頂く場合、どうしても「たんの吸引」を行って頂かなければなりません。やっていただけますでしょうか。
A.長い間、介護現場での必要性にも関わらず、介護職員によるたんの吸引は正式には認められませんでした。
近年、ALS当事者・協会の粘り強い交渉の結果、平成14年に、ヘルパーによるたんの吸引が条件付きで認められました。
さらに本17年度から、ALSの方「以外」の方(例えば重心の人)への吸引行為も、条件付きで認められました。
あくまで「たんの吸引」に限られますが、それでも、ヘルパーに条件付きで許されるケアの範囲は、少しずつ広がって来ています。その意味で、ご質問のケースに関しては、ヘルパーがたんの吸引をふくむご本人のケアを(条件付きで)行なうことができます。
とはいえ、ヘルパーによるたんの吸引を行なうにも、現場レベルでは、まだ多くのハードルがあります(ALSなど難病の人の場合と、重心の人の場合でも、文脈に違いがあります)。
ALS当事者団体等の押し上げがある東京都などに比べると、川崎市では、例えばたんの吸引その他に関する介護職員の研修会は、一つもありません。
川崎市に問い合わせてみましたが、当面その手の研修会を開く予定はないし、また現場でのたんの吸引行為に関しては、それぞれの事業所の責任で――というスタンスでした。
また、吸引行為の責任問題については、今の所、本人・家族とヘルパー個人の間で交わす「同意書」(厚生労働省作成のフォーマット)があるだけ、です。
ドクターと訪問看護師の間には「指示書」がありますが、ヘルパーにはそれに値するものがなく、またネットワークをコントロールする中心機関も明確に位置付けられてはいません。たんの吸引一つとっても、医療と介護の公的な連携は難しいものがあります。
それでも、在宅でのヘルパーによる医療的ケアに関して、たんの吸引行為をふくめ、いろいろな可能性がひろがってきた点は事実です。療育ねっとわーくでは、そのいち段階として、ヘルパーによるたんの吸引を現場で行なうための、ヘルパー研修を開催する予定でいます。
※「ALS」とは?――《ALSは(略)「筋萎縮性側索硬化症」といい、運動神経が障害されて筋肉が萎縮していく進行性の神経難病です。(略)病気が進むにしたがって、手や足をはじめ体の自由がきかなくなり、話すことも食べることも、呼吸することさえも困難になってきますが、感覚、自律神経と頭脳はほとんど障害されることがありません。
進行には個人差がありますが、発病して3~5年で寝たきりになり、呼吸不全に至る場合には人工呼吸器を装着しなければ生き抜くことができなくなります。
10万人に2~6人の発症割合の稀少難病で、残念ながら現在のところ原因も治療法もわかっていません。
一般に40~60歳で発病し、患者は全国で6,774人(平成16年3月末厚生労働省調べ)程と言われています。
(日本ALS協会HPより)