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医療的ケア児の就学を保障してください


Q.医療的ケアのある子どもたちの就学を保障してください。

 

私は、多摩区在住の、重度障害を持つ小学2年生(7歳男児)の母です。現在息子は県立中原養護学校小学部の訪問級に在籍していますが、2年前の就学の際には、学校の選択に、本当に苦労いたしました。

 

本人と家族のために一番望ましいのは、近くの小学校に、親の付き添いなしで(学校の責任管理の下、看護師もしくはそれに準ずる方に医療行為をしてもらう事を前提として)通う事でした。


障害のあるなしに関わらず、誰しもに平等な、それがいわゆる「学校に通う権利」というものだと思っていました。しかし息子の通常の状態が「医療行為を伴っている重度な障害児」というだけで、それはすっかり難しい状況に変わりました。

 

息子は3年前に「気管切開」をしており、栄養注入のための「胃ろう」も開けております。健康状態は、術前よりもずっと安定・好転したにもかかわらず、それを受け入れてもらえる選択肢は反比例して激減し、難しくなってしまいました。

市立の小学校では、「そのような重度な子供が通った前例がない」事や、「入学を拒否することはできないが、医療行為があるため、親は必ず付き添わねばならない」などの理由により、少なからず医療行為を伴う子供は、地域の小学校へ進学をする事は難しいということがわかってきました。

 

市独自のシステムである「たんぽぽ級」においても、医療行為の必要な子供にとっては、結局、通うための条件は障害児級と同じため、何も変らない印象でした。

高度な医療だけが進み、いままでに地域に存在していなかった、より重度な子供たちも、どんどん自宅で生活できるようになっている現状にもかかわらず、その受け皿である教育機関は、現実問題、すでに対応できなくなっているという状況を強く実感し、心から失望いたしました。

 

現在、在籍している中原養護学校は、自宅からは15キロほど離れており、自家用車でも片道4~50分かかります。往復すると2時間近くもかかり、普通の子供よりもずっと体力の少ない息子は、それだけでもかなり疲れてしまいます。

学校の通学バスにも乗ることができません。(人数制限なども理由の一つですが、原則的に親や看護資格を持つ方の同乗ができないため、随時「医療行為」である吸引が必要な息子は、必然的に乗れません。)

 

現在、中原養護では、学校に看護師を2名配置し、注入や吸引などの医療行為をしてもらえるシステムが導入されたため、申請などに時間はかかるものの、学校での医療行為は保証されるという形が少しずつ出来てきました。

 

しかし、送迎に関しては、やはり親の手が必要になります。学校が家から近ければたいして苦にもならないのでしょうが、今住んでいる所からでは、家に帰ったとたん、また迎えに行く時間になる程に遠いため、結局は「終わる時間まで、学校で待機」せざるをえません。

 

息子の他にもきょうだいのいる我が家では、一人の子供だけにそれだけの長時間を割くことはできない為、看護師が学校に配置されている状況であるのにもかかわらず、「訪問級に在籍」という形をとらざるをえませんでした。

 

もしもこれが、地域の小学校の障害児級で看護師の配置をしてもらえていたら、それが息子にとっては、絶対的に一番いい条件の選択肢となります。今後そういう形が施行されるものならば、転校してでもこちらに変えたい、とすら考えます。

 

地域の学校に通うことにより、息子のような重い障害をもった子供たちにとってプラスになるばかりでなく、普通級の健康な子供たちの情操教育においても、プラスになることは多いのではないでしょうか。

 

看護師も常勤で配置されていればもう言うことはありませんが、たとえば非常勤として週に1~2回だけの配置だとしても、かなり家族の負担を減らすことが可能だと思います。

 

重い障害を持った子供とその家族だけが、肉体的・精神的・金銭的負担を背負わなければならないのは、あまりに不公平に思えてなりません。そのために例えば親の責任下で看護師を雇う、ということになりますと、金銭的な負担があまりにも大きくとても毎日というわけにはいきません。

 

何とか、市と学校側で改善・解決策を出していただくことはできないのでしょうか。(恩藤)

 


A.11月6日、川崎市教育委員会と話し合いの場を持ちました。

 

川崎の北部地域に住んでいる私にとっては息子の就学は悩みの種でした。息子は経管栄養や吸引など医療的ケアが必要です。

 

悩んだ末に、子どもに負担をかけず規則正しく安定した生活を送るために地域の小学校を選んで今年で2年目になります。お陰様で生活は充実していて7~8割は通学できます。

 

しかしあまり休むことなく通学できるということは、半面、毎日付き添う親にとっては、かなりの負担です。先生とせっかく向き合ってがんばっている息子の側に親がいるというのも彼の自立を考えると不自然に思えてなりません。

 

この佐藤さんのご相談を受けて、週1回ロンドのサポーターが学校でのつきそいをすることになりました。他の方にも4年間ロンドで学校付き添いをしています。

 

医療的ケアの方が増えている中、いつまでもこのような対応でいいのかどうか、北部療育センターのケースワーカーさんにお願いして川崎市教育委員会の方と懇談会を持っていただきました。 

 

★11月6日の懇談会では、医療的ケアが必要で、地域の小学校に通っている3名のお母さんと方から、現状と要望が出されました。また恩藤さんは上記のように文書でご意見を寄せて下さいました。

 

☆川崎市教委の方のお話では・・・平成10年から医療的ケアをどうするか研究する動きがあった。障害児学級の先生は専門知識がないので、医療的ケアは禁じられている。現在、江川先生にも入ってもらい、今後の医療的ケアの対応について検討をしている。

 

新しく出来る県立の北部養護学校には2名の看護師配置がきまっている。市立の学校にも厚生労働省と文部科学省との特別事業として訪問看護師の派遣が出来ないか検討していく。

 

お母さんから要望のあった、せめて1~2回でも、巡回の看護師さんの派遣で付き添いを代わることなどは、教育委員会の対応だけでは解決できない。

 

今後、健康福祉局等と検討したい。付き添いが要請されている学校については、学校としても責任のある対応ができるように、話しをしておく。・・ということでした。

 

<佐藤さんの感想>・・今回の話し合いでは、まずそんな現状と親の思いをきちんと伝えられたという意味では、とても有意義だったと思います。私としては、養護学校へ通えないという地域的な問題をかかえている事から、北部に養護学校が出来るまでの暫定的対応でもいいので、何か私たちの思いを汲みとってもらい、今から出来ることはないのか、とかすかに期待をしていたのですが、すぐに現状が代わるということはやはりあり得ず厳しさを痛感しています。

 

今後望むことは、とにかく出来ることから手を付けてほしいということ、また是非教育・福祉・医療の連携を密にして、子どもも親も安心して学校生活がおくれるような環境を作ってほしということです。

 

また親にかわる付き添いを個人契約で行うにしても、市教委・学校が一切関与しないということではなく、きちんと状況を把握してほしいです。

 

 

今後も年に1回くらいは、現場の状況、それに対する市教委の考え方、体制などを確認し合うことが必要だと感じました。